2023年05月19日
東北大、ゴルジ体の亜鉛調節機構を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 亜鉛は必須微量元素で、全ての生物の成長、健康維持に重要な役割を持つ。一方、消化酵素やホルモンなど多くの分泌タンパク質は小胞体で合成され、細胞内のゴルジ体を経由して成熟化する。だが、その制御機構についてはほとんど解明されていなかった。

 東北大学多元物質科学研究所の天貝佑太助教らは18日、ゴルジ体の亜鉛イオン濃度調節の詳細な分子機構の一端を解明し、そのタンパク質品質管理機構における役割を明らかにしたと発表した。ゴルジ体内での遊離亜鉛濃度の分布を高空間分解能で明らかにした。
 
 研究チームは、亜鉛定量プローブZnDA-1Hを用いた濃度計測により、ゴルジ体内に約60~100nMの亜鉛濃度の勾配が存在することを発見した。また超解像顕微鏡での観察により、3つの亜鉛トランスポーター複合体がゴルジ体の異なる層板に局在し、亜鉛濃度、ひいてはERp44の細胞内局在、輸送、機能を調節することを解明した。

 本成果はゴルジ体の亜鉛恒常性維持の破綻が分泌タンパク質の生合成異常、ひいては病態発生のメカニズム解明につながることが期待される。
 同研究成果は、2023年5月9日に科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
 
<用語の解説>
◆ゴルジ体 :細胞内小器官の一つで、シス、中間、トランスの層板構造を持つ。小胞体からゴルジ体に輸送されてきた分泌タンパク質は、糖鎖修飾や部位特異的切断、金属イオンの配位などを受ける。ゴルジ体で加工を受けた分泌タンパク質は、トランスゴルジネットワークを介して細胞外や細胞内オルガネラなどへ輸送される。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52784/23_0518_01.pdf