2023年05月29日
九大、寿命1000時間以上の電気化学発光セル開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学 先導物質化学研究所の研究グループは26日、電解質との混合が良好な新規なデンドリマー型熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を開発したと発表した。バイオマス由来電解質とデンドリマーを使用することで長寿命な電気化学発光セルを実現した。
 
 電気化学発光セル(LEC)は構造と作製プロセスのシンプルさから、有機EL素子に変わる安価な次世代の照明や表示デバイスへの応用が期待されている。だが、発光材料と電解質の混合がうまく行かず、素子寿命が短いことなどが課題となっていた。
 
 TADF材料は有機ELデバイスにおける第3の発光材料として注目されているが、親水性の電解質と混ざりにくい疎水性材料が多く、LECへの適用例は多くなかった。
 
 研究グループは今回、新開発したデンドリマーをセルロース(バイオマス)由来の電解質と組み合わせ、黄色発光を示す活性層をLECへと展開して、輝度半減寿命1300時間を達成した。デンドリマーはこれまでの低分子・錯体・高分子とは異なる新たなカテゴリーの発光材料として期待できる。

 今後はデンドリマーのさらなる長寿命化や黄色以外の発光色の実現を通じて、環境にやさしい照明や表示デバイスとしての展開が期待される。
 本研究成果は国際学会誌 「Advanced Functional Materials]」(5月16日)オンライン掲載された。

◆デンドリマー(樹状高分子) :
 一般的な高分子が繰り返し単位を線状に結合した1次元状の分子構造を取るのに対して、各繰り返し単位が分岐した高分子をデンドリマーと呼ぶ。分子が樹木状に規則正しく広がった構造をしており、世代が大きい程、分子サイズも大きくなる。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52928/23_526_02.pdf