2023年06月22日
京大、ワイン酵母がブドウを発酵する条件を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学農学部の渡辺大輔准教授(研究当時:奈良先端科学技術大学院大学)と橋本渉教授らの研究グループは21日、ワイン作りに欠かせない酵母がブドウ果皮に適応する現象を実験室内で再現することに成功したと発表した。

 ワインなどの酒類の製造には、原料に由来する糖分をエタノールに変換するアルコール発酵が行われ、そのためには微生物である酵母が必要不可欠となる。昨今はあらかじめ調製した酵母を添加することで安定的にアルコール発酵を開始させるのが一般的だが、酵母の存在が広く知られていなかった近世以前は、外界から酵母が原料中に混入し自発的にアルコール発酵を引き起こすのに任せていた。ではその酵母はそもそもどこからやって来たのか。

 研究グループは、ワインの原料であるブドウに由来する微生物叢の解析を行い、高いアルコール発酵能を有する酵母は検出されないことを明らかにした。一方、ブドウを乾燥貯蔵させることで生じるレーズンには高頻度でアルコール発酵能を有する酵母が存在し、レーズンを復水することで優占的な生育を示すことをつかんだ。
 
 研究は、発酵食品において、発酵原料・発酵微生物だけでなく原料に元から住み着いている常在菌も加えた3者間相互作用の意義を解明したもので、醸造の起源や成り立ちを考える上で重要な示唆を与えるものとなった。自然界における微生物生態系の構築原理の解明にも貢献すると期待される。

 同研究成果は6月20日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。