2023年08月14日
東北大、合成最難関化合物の合成に世界初成功
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 東北大学薬学部の徳山英利教授、植田浩史准教授らの研究グループはこのほど、医薬分野で新たなシーズとして期待される合成最難関化合物である二量体型中分子アルカロイド、ビプレイオフィリンの化学合成に世界で初めて成功したと発表した。最近注目されている中分子創薬への応用が期待できる。

 生体内酵素に含まれるヘム鉄を模倣して設計した鉄触媒を用いて、従来法より高効率の酸化的カップリング反応を開発した。

 キョウチクトウ科の植物から抽出されるアルカロイドであるプレイオカルパミンは、他のアルカロイドと生合成的に結合し、新規抗がん剤の候補化合物を含む多様な二量体型アルカロイドを生成する。
 
 ビプレイオフィリンは、その構成要素となる分子プレイオカルパミンの合成や結合部分の構築が難しいことから、天然物合成の分野では最も化学合成が難しいとされるインドールアルカロイドの一つ。

 研究グループは、合成終盤に平面性の高いインドール環を構築する独自の合成戦略により、グラム単位での量的供給を可能にするプレイオカルパミンの不斉全合成を達成した。さらに、ヘム鉄を模倣して設計した鉄触媒を用いて、既存法を20倍上回る効率性で2つのプレイオカルパミンのカップリングに成功し、生合成中間体を用いないビプレイオフィリンの完全化学合成を達成した。

 今回開発したアルカロイドのカップリング反応を用いた合成戦略は、中分子アルカロイド創薬や天然化合物の生合成経路の解明への寄与が期待できる。
 同成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に2023年7月24日に掲載された。

<用語の解説> 
◆アルカロイド :窒素原子を含む天然有機化合物の総称。アルカロイドという名称は、大部分の化合物が塩基性を示すことから、アルカリ(塩基性)に由来する。その多くが多様な生物活性を示し、医薬品に用いられる医薬資源として知られる。またアルカロイドは、医薬品だけでなく、コーヒーに含まれるカフェインやタバコの葉に含まれるニコチンなど、嗜好品にも含まれている。