2023年08月16日
広島大「物理的実体は量子相互作用で形成される ?」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

 広島大学先進理工系科学研究科の松下智悟氏らの研究チームはこのほど、測定対象の量子系と測定系との間の物理的な相互作用に着目し、測定過程の動力学を調べることによって、測定で得られた物理量の値が測定の相互作用によってどのように形成されるのかを理論的に明らかにしたと発表した。

 量子化された値は、実際には測定対象系と測定系の間の相互作用における量子干渉効果によって形成される。したがって、十分に強い相互作用は、独自の現実をもたらす。相互作用が十分に強くない場合、過去、現在、未来における環境との影響をすべて含めない限り、物理的現実を説明できないことが今回わかった。

 この結果は、広く一般的に受け入れられている「我々の世界は物質的な構成要素の単純な構造に帰着する」という考えを否定する証拠となる。測定文脈による実在性は、一見逆説的な量子効果を広く説明できると思われる。

 今後、ミクロな世界の単純な見方による誤解を回避した量子力学の基本的な考え方の直感的な理解に発展することが期待できる。
同研究成果は7月31日に学術誌「 Physical Review Research 」に掲載された。

<用語の解説>
◆量子干渉効果:主な非古典的な効果で、重ね合わせでの測定結果とは異なる可能性を出現させる効果。