2023年08月22日
理研、水電解における水素発生を高効率化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 創発物性科学研究センターの川本益揮 専任研究員らの共同研究グループは21日、白金ナノ粒子(PtNP)/炭素ナノマテリアル(CNM)複合体からなる高効率な水電解水素発生触媒を発見したと発表した。次世代クリーンエネルギーである水素を用いた脱炭素社会の実現に貢献すると期待できる。

 研究グループは今回、水の電気分解(2H2O→2H2+O2)による水素発生のために、水中でPtNPとCNM(単層カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック)を直接複合化した3種類の水素発生触媒を開発し、それぞれをプロトン交換膜(PEM)水電解の陰極に用いた。
 
 その結果、各陰極で、既報の白金系水素発生触媒と比べておよそ100分の1の白金量で水素が発生すること、および電流密度100mA/cm2で150時間連続して水素が発生することが分かった。
 
 特に、開発した触媒の一つであるPtNP/単層カーボンナノチューブ触媒は、白金量が市販の白金/炭素触媒の470分の1であるにもかかわらず、270倍も高い質量活性(白金の単位質量当たりの電流値)を示したことから、高価な貴金属の使用量を減らすコスト効率の高いアプローチであるといえる。
本研究は、科学雑誌「ACS Applied Nano Materials」オンライン版(8月21日付)に掲載された。

<用語の解説>
◆炭素ナノマテリアル(CNM): 炭素原子がナノメートル(10億分の1メートル)スケールで集まった材料の総称。軽量で丈夫、電気をよく通す、質量に対して表面積が大きいなどの特別な性質を示す。今回研究にはカーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラックを用いた。