2023年08月25日
「深海に住む貝は何も食べずになぜ生きられるのか」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:北海道大学

「深海に生息する貝は何も食べずになぜ生きていけるのか」。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の深海生物研究グループは25日、このメカニズムを解明したと発表した。北里大学、福井大学、北海道大学、福岡女子大学が同研究に参加した。
 
 研究グループは今回、深海に生息する二枚貝シンカイヒバリガイ(Bathymodiolus japonicus)の細胞内共生系について、宿主動物が持つ細胞内の栄養環境シグナルを統合する制御タンパク質複合体である mTORC1が、共生細菌の維持と消化を制御することを世界で初めて発見し、そのメカニズムを明らかにした。

 深海の熱水域やメタン湧水域には、二枚貝などの動物が生息しているが、これらの動物の多くは、体の細胞内で化学合成細菌(共生細菌)と共生関係を結んでおり、共生細菌が作り出した有機物を栄養としてもらって生きている。しかし宿主動物が、共生細菌をどのようにして獲得・維持しているのか、どのようにして共生細菌から栄養を得ているのかについては、これまで不明だった。

 研究グループは、シンカイヒバリガイがエラ細胞の食作用によって形成された食胞の中に共生細菌を包み込んでいることを明らかにした。また、この共生細菌を包む食胞の膜の表面に存在する mTORC1 は、共生細菌から提供される有機物を検知して、共生細菌の維持と分解をコントロールしていることも初めてつかんだ。

 本成果は、mTORC1 が細胞内共生系において重要な働きをしていることを示す、全く新しい証拠を示している。
 今後、細胞内共生系の制御における mTORC1 の役割に焦点を当ててさらに研究することで、動物と微生物の細胞内共生の成立と維持メカニズムがより詳細に明らかになっていくものと期待される。
 
ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230824_pr.pdf