2023年09月22日 |
京大、一方向のみ伝導するキラル金属電極材開発 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:京都大学 |
京都大学 工学研究科の関修平教授(分子工学専攻)らの研究グループは22日、二硫化チタン(TiS2)と呼ばれる層状化合物の層間にキラル分子を挿入した新奇な物質「キラルTiS2」を開発し、挿入したキラル分子のキラリティに依存して同物質中を特定方向のスピンを有する電子のみがほぼ選択的に伝導することを明らかにしたと発表した。 電流を担う電子の一つ一つは、スピンと呼ばれるミクロな磁石としての性質を持っているが、通常の電流中ではそれぞれのスピンがバラバラの方向を向いているため磁気情報を持っていない。スピンの方向を特定の一方向に揃えることで磁気情報を持たせた電流は、「スピン偏極電流」と呼ばれ、この磁気情報を利用した省電力デバイスや電気化学的な水素エネルギー製造への応用の可能性が期待されていたが、これまでに室温で100%に迫るスピン偏極率を実現できる電極材料は報告されず、実用化への壁となっていた。 本研究ではキラルTiS2に電流を流すだけで、室温でスピン偏極率(スピンが一方向に揃っている度合い)が約95%ものスピン偏極電流が生成可能であることを見出した。さらに、同材料を電極とした高性能な磁気抵抗素子の作製や水電解セルによる水素製造の効率化が可能であることも実証した。本成果は、次世代エレクトロニクスやエネルギー製造を担う革新的電極設計指針となることが期待される。 同成果は、ドイツの国際学術誌「Advanced Materials」(9月11日付)にオンライン掲載された。 ニュースリリース https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20230921-3 |