2023年10月16日

東大、大きくなったがんを消失させる抗体開発

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：東京大学

東京大学大学院の金井求教授（薬学研究科）および東北大学の徳山英利教授らの研究チームはこのほど、がんの薬剤耐性細胞に有効なデュオカルマイシンを使用したAMDC新規薬物送達システムの製造手法を開発したと発表した。 　 　研究チームは、HER2分子を認識するVHH抗体と強い制癌活性を持つデュオカルマイシンを用いた AMDC の分子デザインを考案し、合成に成功した。得られたAMDCをマウスに投与したところ、腫瘍を消失させることを確認した。 　　 　この AMDC は細胞内への内在化活性の強い HER2 という標的分子に結合する VHH 抗体を用いて、薬剤単独よりも 30 倍、がん特異性が高いことが分かった。 　　 　これまでのAMDCは細胞表面にとどまり、細胞内への内在化活性が低かったため、結合する薬剤には光増感剤やラジオアイソトープを使用していた。今回は、内在化活性の強いVHH抗体を用いて、制癌活性の強いデュオカルマイシン結合薬での治療効果を証明できた。特に、ヒト乳がんを移植したマウスで、他の臓器に病理的変化が見られず、腫瘍を消失させる投与条件を発見した。 　今回研究では、強い制癌活性を持つ一方で、副作用を抑えつつ効果を高めることに成功した。今後、人体に使用するための安全性確認など、臨床試験に向けた開発の加速化が期待される。 ◆抗体ミメティクス ：抗体とは異なる構造を持つが、抗体のようにタンパク質と結合する機能を持つタンパク質のこと。 （詳細） https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press1013_01web_amdc.pdf