2023年10月25日 |
北大、蓄電池材料の省エネ合成法 開発に成功 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学大学院 理学研究院の松井雅樹教授らの研究グループは25日、リチウムイオン電池の正極活物質として広く使用されるコバルト酸リチウムを、低温・短時間で合成する手法の開発に成功したと発表した。 層状岩塩構造を持つコバルト酸リチウムは、通常800ー1000 ℃の高温で10~20時間の長時間の焼成工程を経て合成される。また、500 ℃以下の低温でコバルト酸リチウムを合成すると、結晶構造の異なるスピネル型コバルト酸リチウムが得られることから、層状コバルト酸リチウムは、高温のみで合成が可能な高温相であると考えられてきた。 松井教授らは今回、ハイドロフラックス法という新たな合成法を用いることで、市販品と同等の結晶性を持つ層状コバルト酸リチウムを、300 ℃で30分という短時間で合成することに成功した。 また、この反応は150 ℃という低温でも進行し、スピネル型コバルト酸リチウムが形成される反応とは異なる反応経路で合成が進行することを明らかにした。 ハイドロフラックス法は、出発原料に少量の水を加えることで、液相を介した反応が進行し、固相で反応する従来法と比較して、低温でも酸化物の結晶成長が速やかに進行するのが特徴。同手法は特別な設備を必要としないため、蓄電池材料に限らず、様々なセラミックス材料への応用展開が期待できる。 同研究成果は10月23日公開の「Inorganic Chemistry」誌に掲載された。 ◆コバルト酸リチウム : リチウムイオン電池の正極活物質として使用されるコバルトとリチウムを含む層状構造を持つ酸化物。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231025_pr.pdf |