2023年12月07日

北大など「オートファジー」脂質膜解明

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：北海道大学

北海道大学の野田展生教授は7日、微生物化学研究所 、東京工業大学などの研究グループと共同で、JST 戦略的創造研究推進事業において、オートファゴソームを形作るのに必要な膜嵌入過程を試験管内で再構成することに初めて成功し、この過程がオートファジーにおいて中心的に働くたんぱく質Atg8とその脂質化反応を行う酵素群が担うことを明らかにしたと発表した。 　オートファジーは、細胞内の有害あるいは不要なものを分解し再利用する仕組みの1つ。これまでにAtg8とその脂質化を担うE1、E2、E3酵素群がオートファジーで中心的な役割を果たすことは分かっていたが、オートファゴソーム形成、特にその形を作る過程に果たす役割は知られていなかった。 　本研究グループは、脂質化したAtg8とE1-E2-E3酵素群が全てそろった時に膜が嵌入することを試験管内の実験で発見した。このとき、これらたんぱく質は天然変性領域を介して、膜上で柔軟な高次複合体を形成することを高速原子間力顕微鏡および核磁気共鳴法による解析で明らかにした。 　さらにこれまで細胞内局在が不明であったE1酵素も、Atg8およびE2、E3酵素とともにオートファゴソーム形成中の膜に局在することを酵母の実験で確かめた。以上の結果から、これらたんぱく質は協力してオートファゴソームを形作る過程に働くことが分かった。 　本研究によりオートファゴソーム形成の新たな仕組みが明らかになり、今後、オートファジーを特異的に制御する薬剤の開発につながることが期待される。 本研究成果は23年12月6日に英国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」のオンライン版で公開された。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231207_pr.pdf