2023年12月14日 |
千葉大など「励起子束縛エネルギー」解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
千葉大学大学院工学研究院の吉田弘幸教授をはじめ、広島大学、理化学研究所の共同研究チームは13日、有機半導体の励起子束縛エネルギーの精密測定に世界で初めて成功し、励起子束縛エネルギーがバンドギャップの1/4に比例することを発見したと発表した。この結果は、有機半導体の光エレクトロニクスの根幹にかかわるもので、有機半導体の光電子物性を制御するカギとなる。 同研究成果は米国化学会の「 The Journal of Physical Chemistry Letters 」誌(12月11日)にオンライン公開された。 有機半導体材料には、薄さや軽さのほかにも無機半導体とは大きく異なる性質があり、これらを捉えていくことが、今後の研究に不可欠となる。その性質の一つが励起子だ。 半導体が光を吸収すると、励起子と呼ばれる電子と正孔がクーロン引力で結びついた準粒子が生成される。この引力の大きさを励起子束縛エネルギーと呼ぶ。 無機半導体では、励起子束縛エネルギーは室温エネルギー(0.03 eV)よりも小さく、室温では即座に励起子が電子と正孔に解離する。だが、有機半導体では、励起子束縛エネルギーは室温エネルギーの 10 倍以上あるため、励起子が有機半導体中にいつまでも残ってデバイス動作を決定づける。このため有機半導体の光エレクトロニクスでは、励起子束縛エネルギーを制御することが重要となる。 研究グループは、吉田教授が開発(2012年)した、低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)を用いて、有機半導体の電子親和力を 0.05 eV という画期的な高精度で測定することに成功した。これを使って励起子束縛エネルギーを 0.1 eV という従来の5倍の精度で決定する方法を確立した。今後の有機半導体を使った光エレクトロニクスの材料選択やデバイス設計に役立てられることが期待される。 |