2024年02月01日
広大、細胞周期利用ゲノム編集技術向上
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学医系科学研究科の野村渉教授らの研究グループは、独自開発した細胞周期を利用したゲノム編集の正確性をさらに向上させることに成功したと発表した。細胞周期を利用した正確で安全なゲノム編集に高精度タイプのCRISPR-Cas9 を適用することでさらに正確性が向上することを見出した。

 これまでに、細胞周期に依存して発現量が増減するタンパク質をゲノム編集に利用することで、自律的に遺伝子の切断が制御され、CRISPR-Cas9 酵素単独でゲノム編集を行う従来の方法と比較して相同組換えによる正確な配列編集効率が最大5倍程度向上し、類似配列での誤った編集を最大で 80%程度低減させることが可能になることを報告してきた。

 この方法は CRISPR-Cas9 活性が自律的に制御できるため、化合物や光刺激を利用したゲノム編集方法では困難だったin vivoゲノム編集技術などへの応用が期待される。
 新たに高精度タイプの Cas9 を適用したことで、これまでは難しかった不正確なゲノム編集の割合を低減させることが可能となり、正確なゲノム編集が起きた細胞を最大3 倍以上多く得ることが可能になった。
 本研究成果は1月23日「Molecular Therapy -Nucleic Acids」オンライン版に掲載された。
 
<用語の解説>
◆CRISPR-Cas9 :クリスパーキャスと呼ぶ。元々は原核生物における獲得免疫の一つであり、外来遺伝子を切断する機能を持つ。これを応用することで真核生物の遺伝子を切断し、ゲノム編集を行うシステムができた。