2024年02月26日 |
九大、酸化ストレスと消化管がんの仕組み解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:九州大学 |
酸化ストレスは消化管がんの誘発要因と考えられているが、正常な細胞がどのようにがん細胞に変化していくのかの仕組みについては不明な点が多い。 九州大学大学院 医学研究院の大野みずき助教らの研究チームはこのほど、酸化されたDNAが消化管がんの原因となることを明らかにした。研究チームは今回、マウスに酸化剤を含む水と通常の水を与え、小腸でのDNAの変異やがんの発生頻度を解析した。DNA修復酵素であるMUTYHの機能を欠損させたマウスでは、慢性的な酸化ストレス状態が続くと、早い段階で正常組織内でのDNAの変異が増加し、その後の発がん頻度も著しく増加した。 変異の中でも特にグアニンの酸化によって引き起こされるG:C塩基対からT:A塩基対への変異の頻度が、酸化剤の濃度とがんの頻度に関連していた。さらに、特定の塩基配列内に存在するグアニンが酸化されやすいというDNAそのものの性質が、「細胞増殖シグナルを過度に活性化させ消化管発がんの原因となるような遺伝子変異」の発生に影響していることが明らかになった。 一方、MUTYHが正常に働いている野生型マウスでは、酸化剤の濃度が上がっても変異とがんの発生頻度はごくわずかしか増えなかった。このことから、MUTYHが酸化グアニンによる突然変異を減らすことで、酸化ストレスによる消化管がんの発生を強力に抑制していることを明らかにした。 本研究の成果は、ヒト遺伝性大腸がん家系での発がんリスクのコントロールに役立つ可能性がある。 同研究成果は「Genome Research」誌2024年1月30日(現地時間)に掲載された。 <用語の解説> ◆酸化ストレス :生体内で活性酸素種(ROS)の発生が抗酸化防御機構を上回った状態のことで、ROSが過剰に発生している状態をさす。ROSは細胞内の多くの生体物質を酸化し本来の働きを変えるため、様々な疾病や老化との関連が示唆されている。がんの発生に影響すると考えられている。 ニュースリリース参照 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1048 |