2024年03月11日
九大、自閉症発症の分子メカニズムを解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 自閉症は「対人コミュニケーション障害」と「活動や興味の範囲の著しい限局性」を主な特徴とする神経発達障害で、発症頻度が総人口の約1.5%と非常に高い一方で、根本的な治療法や正確な診断方法などは確立されていない。
 
 近年、自閉症患者を対象とした大規模な遺伝子変異探索がおこなわれた結果、CHD8という遺伝子に最も多くの遺伝子変異が同定されたことから、現在CHD8は自閉症の病因・病態を理解するための代表的な遺伝子として世界的に注目を集めている。
 
 しかし、これまでは自閉症の発症原因としてCHD8タンパク質の量的減少に着目した研究がほとんどで、タンパク質の機能障害を生じる変異についての解析は行われてこなかった。そのため、どの変異がどのような分子機序で自閉症の発症に関与しているのかについてはほとんど理解が進んでいなかった。

 九州大学の中山敬一教授らの研究グループは、自閉症患者におけるCHD8遺伝子上のミスセンス変異に対して、様々な予測スコアを適用し、これらの変異が高いスコアを持つ群と低いスコアを持つ群に大別されることを見出した。これらのうち代表的な変異について、CHD8タンパク質の活性、幹細胞の神経分化、マウスの行動にどのような影響を及ぼすかについて検証したところ、高スコア群に含まれる変異のみが自閉症の発症に寄与することを突き止めた。さらに、高スコア群の変異の中にはこれまで予想されていなかった経路を介して自閉症の発症に関与するものも見つかった。今後自閉症発症のリスク予測や診断精度の向上に役立つと期待される。
 本研究成果は英国の雑誌「Molecular Psychiatry」(3月5日)に掲載された。

(詳細)
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1053