2024年03月13日
北大、アニオン重合反応の活性種観測に成功
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 北海道大学大学院理学研究院の永木愛一郎教授らの研究グループは13日、フロー型反応器と赤外分光器を活用し、アニオン重合反応中における活性末端の直接観測に成功したと発表した。数秒で分解してしまう、アニオン重合反応の活性末端を赤外分光法により観測できるようにした。

 アニオン重合は1950年代に初めて報告された化学反応で、プラスチックなど高分子材料の精密な合成ができる。アニオン重合では、負電荷を帯びた中間体(重合活性種)が発生するとされているが、重合活性種はすぐに分解してしまうため、反応中にこれを直接観測した例はなかった。つまり70年の間、アニオン重合反応の仕組みに関する重要な情報は不明なままだった。

 研究グループは今回、反応時間を精密にコントロール可能なフローマイクロリアクターと、高速な分析が可能なインライン分光装置を活用する「フラッシュモニタリング法」を開発し、重合活性種を発生直後に分析した。
 オリゴエチレン系メタクリレート由来の重合活性種を発生させ、その0.88秒後にIR測定することにより、この活性種の直接観測に成功した。さらに反応時間の制御により、本活性種が発生の2.1秒後には分解する、極めて不安定な化学種であることを解明した。
 
 この活性種の性質を利用し、従来は困難だったオリゴエチレン系メタクリレートのブロック共重合反応を実現した。同手法により、これまでアニオン重合反応に利用が困難だった材料を使った高分子材料の合成が可能となり、さらなる高分子材料合成への展開が期待される。
 
 なお本研究成果は3月12日公開の「Chemistry: A European Journal」誌に掲載された。また、今回の研究成果は同日付掲載誌の表紙に選ばれた。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240313_pr.pdf