2024年03月13日
東工大・九大、細胞分裂の連続観察に成功
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東京工業大学

 東京工業大学 物質理工学院の小西玄一准教授と九州大学理学研究院の池ノ内順一教授らの研究チームは12日、高光安定性かつ低毒性のソルバトクロミック蛍光色素を開発し、約1時間にわたり、細胞膜中の脂質の組成や流動性を連続撮影することに成功したと発表した。細胞脂質の成分組成を長時間観察できる蛍光色素を開発した。

 生きた細胞の生体膜中の脂質層の組成や秩序、その時間変化の解析は、細胞接着やシグナル伝達などの生命現象やがんなどの病態形成解明のカギとなる。しかし、従来用いられてきた蛍光色素には光安定性などの問題があり、生きた細胞膜組成などの長時間観察はこれまで不可能だった。

 研究チームは今回、蛍光の極性応答に必要な電子受容性官能基として、脂質に含まれるエステル結合を用いてソルバトクロミック蛍光色素を開発した。細胞死を誘導せず、強いレーザー光を照射しても安定なこの新しい色素を用いることで、生命イベントの連続的な可視化に成功した。
 
 この色素は一般的な蛍光顕微鏡だけでなく、数ナノのサイズを判別する超解像顕微鏡にも用いることができる。多様な膜機能の解明、細胞内外の刺激に応答した膜タンパク質の活性化などのメカニズム解明にもつながると期待できる。
 本研究成果は、総合科学雑誌「Advanced Science」(3月12日)に公開された。

<用語の解説>
◆ソルバトクロミック蛍光色素: 周囲の極性環境によって蛍光波長が変化する色素。機能性蛍光色素として、バイオイメージングだけでなく、化学センサーとして広く用いられている。
  
(詳細)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/56438/24_0312_03.pdf