2024年04月05日
北大、河川の水流がイワナの稚魚を選別する
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学水産科学研究院の和田哲教授らは、北海道南部に生息するイワナの稚魚で水路実験を行い、着底行動(水底に接地して、じっとしている行動)を示す稚魚が、長時間活発に遊泳する稚魚よりも流下しにくいことを実証したと発表した。これまでの研究も合わせると、野外の河川上流域では、遊泳する傾向の強い稚魚が流下(水流によって流されて生じる移動のこと)することで、着底する傾向の強い稚魚がその比率を高めていくような独自の進化が起こっていることが示唆される。

 歩行や飛翔など、生物の移動による進化機構は、近年「空間的選別」と名付けられ、特に外来種が侵入していく過程で生じるものが注目されている。ただ、空間的選別による進化は、移動した個体が元の場所に戻るとその進化が弱まるのが普通で、あくまでも一時的な現象だという考え方が通説だった。
 
 しかし堰堤や滝の上流域の魚類では、段差の下流へ流下した個体が元の場所に戻ってくることはない。
 そのため、空間的選別が弱まることなく長期的に持続すると考えられる。この点で、本研究成果は空間的選別の通説を覆す成果といえる。

 本研究成果は、河川生物の進化に関する理解を深めると同時に、「受動的な空間的選別」という進化機構の可能性を提示することで、その適用範囲の拡張にも重要な貢献を果たすことが期待される。
本研究成果は3月5日公開の「Ecological Research」誌にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240402_pr2.pdf