2024年04月08日
広島大、音楽が人の心身に及ぼす影響を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学の山脇成人特任教授(感性科学研究センター)と、東京大学の大黒達也准教授(次世代知能科学研究センター)の研究グループは5日、音楽の和音列を聴き取ることによって誘発される心身への効果を発表した。音楽が人の心身に及ぼす影響を解明した。内閣府ムーンショット計画の一環。

 研究では、527 人の参加者を対象としたボディマッピングテストを通じて、和音列の予測誤差および不確実性の時間的な「ゆらぎ」が、心臓などの特定の部位や感情をどう刺激するかを観察した。その結果、心臓の感覚が美的鑑賞や快の感情と強く連動することを明らかにした。

 音楽は人類の歴史を通じて、さまざまな文化や世代に影響を与えてきた。音楽を聴くと、体が動いたり、楽しさや悲しさなど様々な感情を引き起こすことはわかっていた。だが、音楽のどのような要素が私たちの心と身体にどのように影響を与えているのかは、完全には解明されていなかった。

 研究グループは今回、527人の成人を対象にしたボディマッピングテストにより、和音列を聴き取った時の主観的な身体感覚を調べた。 まず、音楽コーパス(890 曲)を用いて、和音列の予測誤差と不確実性の一般モデルを作成した。このモデルを用いて、8種類の異なる予測誤差と不確実性の時間的な「ゆらぎ」を持った和音列刺激を作成した。

 音楽の和音の予測と不確実性のゆらぎ方の違いによって、感じる身体の部位と強さが異なる。研究グループは刺激によって得られた、8 種類の和音列聴取に対応する身体感覚と感情反応を分析した。その結果、音楽の和音列の不確実性と予測誤差の特定の「ゆらぎ」が心臓や腹部に限局的な身体感覚を引き起こすことが明らかとなった。これらの感覚が美感や快の感情と強く関連していることも分かった。この成果は、音楽がいかに人の心身に影響を与えているかの理解につながる。今後、心身への健康増進への応用が期待される。

<用語の解説>
◆ボディマッピングテスト :刺激などによって感じた身体の位置を応えるテスト

(詳細)
https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/229790/pr20240405-01.pdf