2024年04月08日
東レ、ポリマー結晶型 新規抗がん剤開発
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東レ

 東レは8日、東京慈恵会医科大学および帝京大学と共同で行った非臨床研究で、ポリマー結合型抗がん剤が、複数の固形がん種に対して強い抗がん作用を示すこと、さらに既存のアンスラサイクリン系抗がん剤に認められる心毒性をはじめとした複数の毒性が顕著に低減することを確認したと発表した。

 研究成果は4月5日~10日、米国サンディエゴで開催中の米国癌学会(AACR)年会で発表した。成果の一部は4月発行の「Toxicology and Applied Pharmacology」(485号)に掲載予定。

 近年、がん治療では、抗体医薬品などの分子標的薬が注目され、化学療法剤が多く使用されている。だが化学療法剤には、がん細胞だけでなく、正常細胞にも作用するため副作用が生じ患者のQOLが低下するケースがある。また抗がん剤の中には、累積投与量の制限につながる心毒性のほか、脱毛、手足症候群の発生などの副作用が知られている。
 
 東レが開発中のTXB-001は、活性本体であるアンスラサイクリン系抗がん剤に、機能リンカーを介してポリマーを結合させた新規抗がん剤で、前田浩熊本大名誉教授(故人)が化合物設計した。その後、東レが医薬品質を損なわずポリマーへ結合する製造法を確立した。

 TXB-001は、シンプルな構造でありながら、ドラッグデリバリーシステムとして薬物をがん組織へ選択的に集積させ、作用させる仕組みが付与されている。今回、東レは各大学との共同研究で、予後の悪いトリプルネガティブ乳がんや膵がんなど、悪性度の高いがん種に、TXB-001の強い抗がん効果を確認した。副作用リスクを低減し、分子標的薬が効きにくいがん種への有効性を示す、がん治療の新たな選択肢となる可能性がある。
 同社は2030年代の実用化をめざし開発に注力していく方針だ。
 
<用語の解説>
◆ドラッグデリバリーシステム :有効性を高めて副作用を減らすために、薬物を体内の特定の部位に送り届ける技術。