2024年04月12日
北大・新仮説「海洋の渦状循環が棚氷を融かす」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 低温科学研究所の中山佳洋助教らの研究グループは12日、南極パイン・アイランド/スウェイツ棚氷などの融解が、海流と海底の相互作用によって決定されていることを世界で初めて明らかにしたと発表した。

 西南極アムンゼン海に位置するパイン・アイランド棚氷/スウェイツ棚氷は、近年南極で最も急速に融解し、氷河を海に流出させ、海面上昇に大きな影響を与えている。もしスウェイツ氷河全体が融ければ、地球の平均海面は約65cm、周囲の氷河が連鎖的に崩壊すると海面水位は5mも上昇する可能性がある。

 研究グループは、観測再現性を追求したモデル開発を行い、他のモデル研究と比べ、格段に優れた過去の観測結果を再現し、今回の発見につながった。研究グループは、南極沿岸流の渦状循環と海底が相互作用することで西南極棚氷融解を決定するという新仮説を提案した。

 具体的には、過去の氷河期に氷河が削って形成された谷の東側斜面に沿って、棚氷を融解させる温かい水塊が流れてくる。この水塊の一部は棚氷下部へと侵入し、西斜面に沿って流出する。南極沿岸域を流れる海流が強くなると、谷内部の流れが強化され、強い渦状の循環が形成される。
 渦状の循環は中心部に上昇流を伴い、水深400~500メートル以深に存在する暖かい海水を持ち上げる。この暖かい海水が冷たい棚氷のある水深まで湧昇し、棚氷を融かしている。
 
 これは従来の外洋風説とは異なる新たな仮説となる。本メカニズムの駆動源である沿岸流は、外洋の風と関連性が低いことも示され、将来予測のシナリオも大きく書き変える可能性を示唆している。
本研究の成果は4月11日公開の「Nature Communications」にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240412_pr.pdf