2024年04月15日
九大、大腸がん免疫寛容を引き起こす仕組み同定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学別府病院外科の三森功士教授は13日、大阪大学、東京医科歯科大学、国立がん研究センターなどと共同で、アジア人早期大腸がん患者(5名)と進行大腸がん患者(1名)の空間的転写産物解析と、公共データベースにおけるアジア人大腸がん患者(23名)のシングルセルRNAシークエンスデータを用いて、深層生成モデル活用統合解析を行い、大腸腺腫とがんの境界部における単一細胞レベルの現象を明らかにしたと発表した。
 
 この中で腫瘍細胞は、免疫寛容に関わる制御性T細胞と共局在関係を有し、Midkine (MDK)という分子を介したシグナル経路が関与していることを解明した。

 さらに、MDKは大腸がん早期から発現を認め、MDKシグナル経路が、大腸がんにおける臨床的予後に関与することを明らかにした。

 これらの知見は将来、早期大腸がんの診断だけでなく、免疫療法における有望な治療標的となること、さらに、発がん予防への展開が期待される。
同研究成果は「eBioMedicine」誌に2024年4月13日にオンラインで掲載された。

<用語の解説>
◆免疫寛容 :免疫が自己を攻撃しないようにするシステムのことで、異物と認識し排除するのではなく、受け入れて共存すること。
◆深層生成モデル :深層学習を用いてデータ生成過程を記述した確率モデルであり、近年単一細胞レベルの解析への応用が進んでいる。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1068