2024年04月18日
東北大、イオン交換反応の進行を計算科学で予測
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 東北大学多元物質科学研究所の鈴木一誓講師らの研究グループは18日、イオン交換が生じる前駆体とイオン源の組合せを、第一原理計算によって高速で見極める技術を確立したと発表した。
 これまでは実験的に検証するしかなかったイオン交換に適した物質の組合せを、第一原理計算によって高速で見極めることが可能になった。

 太陽電池や燃料電池などのさらなる高効率化のためには、それに適した新しい物質の探索が必要不可欠となる。 固体イオン交換法とは、既存の物質が含むイオンを、別の固体物質が含む異なるイオンに置き換えることで新しい化合物を作り出す手法のこと。従来の原料から合成する高温反応法では、800℃以上の高温が必要となるのに対し、固体イオン交換法は150~400℃で反応が進むため、新物質を探索するためのツールとして期待されてきた。

 だがイオン交換が生じる物質の組合せ(前駆体とイオン源の組合せ」を予測する手段はこれまでなく、新物質を合成するためには、様々な組合せを試行錯誤する実験が必要だった。今後、太陽電池や燃料電池などに適した、新物質の開発加速が期待される。
同研究成果は4月17日「 Chemistry of Materials 」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆固体イオン交換法
 無機化合物に適用する固体イオン交換法とは、あらかじめ用意した物質(前駆体)の一部のイオンを、イオン源に含まれる別のイオンと交換することで、新たな化合物を合成する手法のこと。高温で原子を再構成する高温反応法と異なって、イオン交換法は低温(150~400 °C)でやさしくイオンを交換する手法であることから「ソフトケミストリー」の一種とされることもある。前駆体の結晶構造を維持したままイオンを交換する手法であるため、通常の高温反応法では得ることができない化合物の合成に用いられる。
 
◆第一原理計算
 実験結果を参照しないで固体中に存在する電子の状態を計算することで、物質のさまざまな性質を予測する手法。本研究では、物質の熱力学的な特性(安定性)の予測に用いた。結晶構造とそれを構成する元素の種類がわかれば計算が可能であるため、これまでに合成されたことがない未知の物質についても、イオン交換による合成の可否を推測することが可能である。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20240418_03web_ion.pdf