2024年05月09日 |
北大、超伝導磁束の液晶状態を発見 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学 理学研究院の延兼啓純助教らの研究グループは8日、2次元層状物質である遷移金属ダイカルコゲナイド化合物に微量の鉄(Fe)原子をインターカレートすることで超伝導磁束の液晶状態とそのダイナミクスの観測に成功したと発表した。 遷移金属ダイカルコゲナイド(MX2系)は、超伝導と電荷密度波が競合または共存している物質群として、1970年代から研究が進められてきた。近年は2004年にノボセロフ博士、ガイム教授らによる単層グラフェンにおける量子ホール効果の発見(2010年ノーベル物理学賞)を契機に、原子層デバイスにおける新奇物性探索が世界的に流行している。 今回研究グループは、NbS2(超伝導転移温度5K)に鉄を0.08%の組成比で封入したFe0.08%-NbS2単結晶を作成し、超伝導特性を調べた。鉄原子が層間に侵入すると、通常は超伝導が抑制されるが、興味深いことに超伝導の転移温度や上部臨界磁場が鉄を含まない試料よりも高い、つまり超伝導がより増強されることを発見した。 さらに、磁場中で磁束が固体と液体の中間状態である液晶になっていることを見つけた。これまでにMX2物質群で磁束液晶に関する報告はなく、超伝導の発現機構の解明や磁束液晶状態を利用したナノスケールデバイス研究への発展が期待される。 なお、同研究成果は、2024年5月2日付の「Physical Review B」誌に掲載された。 <用語の解説> ◆インターカレート :層状物質の層間に他の原子や分子が挿入すること。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240508_pr2.pdf |