2024年05月23日 |
北大「魚は流れに応じて 最も楽な姿勢を選ぶ」 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学 水産科学研究院の髙木力教授らの研究グループはこのほど、魚は水の流れに応じて最も楽な姿勢を選ぶ、との研究結果を発表した。魚が尾ヒレを振らずとも推進できる「ドラフティング」について、マアジやウグイと翼模型を用いた生体実験を行い、魚が魚体まわりの流れ場の変化に伴う圧力差を利用することで魚体にかかる力を低減させるメカニズムを明らかにした。 魚は尾ヒレを振って流体を押し出し、その反作用で推進する。ただ、川の岩など構造物周辺では尾ヒレを振らず定位する様子も報告される。これらは構造物の影となる死水域や前方の淀み域に魚が入ることで流れから受ける抗力と釣り合わせている。そのため似た個体サイズが集まる魚群内で同様の現象が起きるとは考えにくい。 そこで本研究では魚群を想定し、魚の流線形に似た翼模型を構造物に採用した。粒子画像流速測定法(PIV)を用いて流れ場を可視化・解析した結果、流れの剥離がほぼない状態で比較的高い流速を受ける環境下でも、翼模型近傍に生じる局所的な低圧領域を利用して魚はドラフティングを実現させていた。 この仕組みは生体実験のほか、魚を再現した模型実験や数値流体力学(CFD)でも検証し、魚の能動的な遊泳姿勢の制御がなければドラフティングの維持は困難だと明らかにしている。構造物まわりの局所的な圧力差すら推進力に利用できる魚の優れた形態や、常に魚体にかかる力を最小限に留めようとする柔軟な機能性が示唆されており、魚群遊泳における遊泳時の消費エネルギー節約の仕組みを説明する一因として発展が期待できる。 同研究成果は4月20日に「Journal of Theoretical Biology」誌でオンライン公開された。 (詳細) https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240521_pr.pdf |