2024年06月04日 |
東北大、CNTに光照射し新エネルギー現象観測 |
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東北大学金属材料研究所の小野頌太准教授らは3日、カーボンナノチューブを窒化ホウ素ナノチューブで包んで入れ子状にした筒形の構造体に光を照射すると、両者の間に電子の抜け道が発現することを発見したと発表した。超高速光デバイスの開発や光照射で生じる電子などの超高速操作、デバイスの効率的排熱など、幅広い分野への応用が期待できる。 近年、厚さが1原子分しかない層状や筒状の材料(低次元材料)を重ねると、新しい性質が発現することが報告されている。こうした構造体の静的な性質などはこれまで数多く調べられてきたが、光を照射することで生じる層間の電子移動や、その後に続く原子の運動など動的な性質については、ほとんど不明だった。 今回小野准教授らは、カーボンナノチューブ(CNT)を窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)で包み、入れ子にした筒状の構造体を合成し、そこに光を照射した時に生じる電子と原子の運動を観測した。電子の運動については、光の照射によって生じる瞬間的な分子構造や電子構造の変化を10兆分の1秒の精度で捉えられる広帯域の超高速過渡透過率測定で観測した。また原子の運動については、1兆分の1秒の精度で観測可能な超高速時間分解電子線回折法を用いて観測した。 その結果、異種の低次元材料を重ね合わせると、電子の抜け道(チャネル)が発現することを発見した。さらに、CNTに光を当てることで生じた電子が、このチャネルを通してBNNT中に移動することが分かった。この励起された電子のエネルギーは、BNNTの中で熱エネルギーへと速やかに変わるため、熱エネルギーを極めて速く輸送することが可能となる。 今回研究により、二つの異なる物質の界面で生じる新しい物理現象が明らかになった。この現象は、熱エネルギーの超高速輸送に加え、超高速の光デバイス開発や、光照射で生じた電子や正孔の超高速操作などさまざまな新技術に応用できる可能性がある。 (用語の解説) ◆カーボンナノチューブ(CNT):炭素原子だけから成るチューブ状の一次元物質。層数が 1 層の単層カーボンナノチューブと、単層カーボンナノチューブが入れ子になった多層カーボンナノチューブがある。本研究では多層カーボンナノチューブを用いた。 (詳細) https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20240603_05web_CNT.pdf |