2024年06月17日
京大、世界最長レベルのヘリセン合成
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:京都大学

 有機化合物の合成は多くの場合溶液中で行われる。また得られた化合物の基本的な物性も溶液として調べることが多く、溶媒に溶けない化合物は研究を進めることが難しい。物質が溶解するかどうかは分子と溶媒の相互作用(溶媒和)に依存するため、分子間の相互作用が有意に大きいと凝集して溶けにくい固体となる。
 
 したがって、平面性の高いベンゼン環などが連なった巨大な分子を合成する際には、分子間相互作用を小さくするために置換基と呼ばれるユニットを取り付けて分子を覆うことが一般的だった。

 京都大学工学部の田中隆行准教授(分子工学)らはこのほど、溶媒分子との水素結合を利用することにより置換基で覆わなくても溶解する一連のアザ[n]ヘリセンを合成し、世界最長のアザ[19]ヘリセンでさえも十分に溶解して物性測定が可能であることを実証した。また、その基礎物性を系統的に調査し、新たな電子・光学材料としての可能性を示した。

 今後、他のさまざまな官能基についても同様の性質が利用できないかを調査し、溶媒分子との水素結合によって発現する新たな物性について探索していく方針だ。

 本研究成果は6月13日、米国学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載された。
 
(詳細)
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/r60614seika_tanaka