2024年06月26日
九大、治療法のない進行型多発性硬化症 解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学医学研究院神経内科学分野の山﨑亮准教授らはこのほど、従来、治療法のなかった進行型多発性硬化症について、その原因を解明したと発表した。
 同疾患の患者は若年女性に多く、中枢神経系疾患で再発を繰り返しやすい。山崎准教授らは二次性進行型MSの病態について、その一部が脳内グリア細胞の異常活性化とその拡散であることを突き止めた。
 多発性硬化症(MS)とは、若年女性に多く、患者の約2割程度は、発症後約20年で緩徐進行性の二次性進行型MS(SPMS)に移行する。今のところ病態進行を止めるのに有効な治療法は見つかっていない。
 山崎准教授らは今回、アストログリア細胞が発現するギャップ結合蛋白コネキシンの作用を薬理学的にブロックすることにより、グリア細胞からの炎症反応を抑制するメカニズムを発見した。動物モデルを用いて検証した結果、高い治療効果を示した。今後は、同研究をもとにさらに新しい治療法の開発が期待される。
 本研究成果は、Springer Nature社「Scientific Reports」誌(2024年5月13日)掲載された。
 
<用語の解説>
◆コネキシン :コネキシンは膜貫通タンパク質で、6つのコネキシンを結合させてギャップ結合を形成する。イオンとカルシウムの輸送を促進し、細胞間のコミュニケーションを維持する。
◆疾患修飾薬 :再発や疾患の進行を遅らせる作用をもった薬剤。
◆アストログリア :中枢神経系に最も多く存在する常在細胞で、恒常性を維持し、神経細胞の生存と機能を支える。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1103