2024年07月18日

京大、小笠原に絶滅リスクの世界自然遺産

【カテゴリー】：行政/団体 【関連企業・団体】：京都大学

京都大学農学研究科の井鷺裕司教授らの研究グループは17日、世界自然遺産で小笠原諸島に固有の植物ノボタンについて、4分類のうち3分類群は環境省の保護事業によって保全が行われているが、ハハジマノボタンとイオウノボタンに対しては、対策は行われていない。「小笠原諸島の生物多様性や独自の生態系の由来を理解し、保全が危機的になる前に効率的な保全策講じる必要がある」との見解を示した。 　ノボタン属はアジア・オセアニアに100種ほど知られており、観賞用や薬用に利用されている。日本には4分類群が分布しているが、このうち3分類群（ムニンノボタン・ハハジマノボタン・イオウノボタン）は世界自然遺産小笠原諸島に固有で、いずれも希少。これらのうち、ムニンノボタンは発見時から個体数が少なく、環境省の保護増殖事業などで集約的な保全が行われてきたが、ハハジマノボタンとイオウノボタンについては、そういった対策は行われていない。 　井鷺教授らのグループは、各種ノボタンについて比較ゲノム解析を行ったところ、小笠原固有分類群はいずれも普通種であるノボタンよりも遺伝的多様性が低くなっていた。中でもハハジマノボタンは、有害なアミノ酸変異割合に基づくゲノムの脆弱性が高いことや、ゲノム内や個体間の遺伝的差異がほとんど消失しているなど、ゲノム構造がきわめて脆弱で、ムニンノボタンよりも危機的な状況にあり、早急な保全策の構築が必要なことがわかった、としている。 　本研究成果は2024年7月17日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。　 　 （詳細） https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-07-17-2