2024年07月23日
東大「徹夜後に長く深く眠る仕組み解明」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学大学院 医学系研究科の上田泰己教授(機能生物学)らは22日、長時間の覚醒後に生じる長く深い睡眠(リバウンド睡眠)に大脳皮質の主要な抑制性神経であるパルブアルブミン(PV)発現神経の活動の適切な調節が重要であることを解明したと発表した。JST戦略的創造研究推進事業による成果。
 
 徹夜などで睡眠不足に陥ると強い眠気を感じ、その後の睡眠は長く深くなる。これは脳が覚醒していた履歴を記録し、その履歴に応じて必要な睡眠を補償する仕組み(睡眠恒常性)があるためだ。だが、脳内で睡眠恒常性がどのように実現されているのかはよく分かっていなかった。

 研究グループは、マウスを実験的に睡眠不足にすることで、眠気が高まると大脳皮質のPV発現神経が活性化され、リバウンド睡眠が起きることを明らかにした。さらに、たんぱく質リン酸化酵素であるCaMK2(カルシウム/カルモジュリン依存性キ ナーゼ2)の活性化が、眠気に応じてPV発現神経を活性化させることでリバウンド睡眠を引き起こすことを解明した。

 同研究により、睡眠科学の大きな謎の1つである睡眠恒常性の分子・神経メカニズムの一端が明らかになった。この結果から、眠気を定量的に把握しながら適切にコントロールする手法の開発につながることが期待される。
本研究成果は英国科学誌「Nature Communications」(7月18日)オンライン版で公開された。