2024年07月25日
九大、植物素材のみでヒト幹細胞を制御培養
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:九州大学

 再生医療は、病気やけがなどで機能が損なわれた組織や臓器を修復・再生する医療技術。その実現には、からだの外でヒトの細胞を効率的かつ適切に培養する必要があるが、これまではヒト以外の動物のコラーゲンや生体成分を抽出して培養基材に使う必要があった。そのため、免疫拒絶や感染リスクの観点から、動物成分を全く含まない(Xeno-free,ゼノフリー)細胞培養基材が望まれていた。

 九州大学農学部の北岡卓也教授らの研究グループは23日、木とヒトに共通するナノ構造である「ナノファイバー形状」と「規則的な多糖界面構造」に着目し、本来細胞接着の能力を全く持たない樹木由来のセルロースナノファイバーに、結晶構造を保ったまま硫酸基等の生体官能基を導入することで、すぐれた細胞接着性と増殖性が発現することを発見したと発表した。
 
 樹木由来のセルロースナノファイバーに生体官能基を導入することで、動物由来成分を全く使うことなく、ヒトの腸骨骨髄から採取した間葉系幹細胞のゼノフリー培養に成功した。従来の動物由来コラーゲンに匹敵する培養効率を、植物成分のみで達成した。

 今回の発見は、ヒト幹細胞を用いる再生医療のみならず、生体内の組織・臓器機能を持つ細胞を生体外でつくる技術や、それを活かした創薬支援基盤技術の開発に役立つことが期待される。
 同成果はエルゼビア社の学術誌「 Carbohydrate Polymers 」(7月10日)に掲載された。