2024年07月31日
慢性腎不全の原因物質を除去、吸着材発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 慢性腎不全はわが国の成人の8人に1人が発症する国民病とされているが、九州大学大学院工学研究院の藤ヶ谷剛彦教授らの研究グループは30日、慢性腎不全の原因物質を効率的に体内から除去する吸着材を発見したと発表した。
 腎不全は症状が進行すると急激に悪化し、人工透析生活を余儀なくされる。だが、人工透析は患者の肉体的・精神的負担が大きい。慢性腎不全の進行を遅延させることは患者にとって重要だが、現在行われているインドールなどの医療用活性炭によって吸着除去する処置法にもアミノ酸やビタミンなどの必要物質も吸着除去してしまう選択性の低さという課題がある。1日6gもの大量の服用が必要で、患者の負担が大きいなどの問題もあった。
  藤ヶ谷授らは、選択性の低さは、従来の吸着材に空いている穴の大きさがバラバラであることに原因があると考え、メソポーラスカーボンと呼ばれる決まったサイズの穴を持つ炭素材料に着目した。
 メソポーラスカーボンのインドールの吸着選択性を調べたところ、様々なアミノ酸が混在する環境において市販の吸着剤と比較し3倍ものインドールの吸着選択性を有することを発見した。
 今回の発見は、服薬量を減らせることを意味し、患者の服薬負担軽減につながる。負担が軽減されれば患者は継続して服薬することが可能になり、慢性腎不全の進行遅延に役立つと期待できる。
 本研究成果は炭素材料学会発行の国際学術誌「Carbon Reports」に7月22日にオンライン掲載された。
 
ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/58320/24_0730_02.pdf