2024年07月31日
海洋研など、氷河融解水の生物への影響調査
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球表層システム研究センターの干場康博特任研究員は、東京大学、国立極地研究所、北海道大学と共同で、新たに開発した海洋低次栄養段階生態系モデルを用いて、氷河融解水が海洋表層の植物プランクトンの増殖に影響を与えるプロセスを定量的に評価することに成功したと発表した。
 研究チームは、さらに温暖化の進行に伴う氷河融解水の流出量の変化、氷河後退による融解水の流出深度の変化に対する感度実験を実施した。その結果、温暖化が進行した場合、フィヨルド域の氷河融解水が増大し、氷河が大きく後退した条件下で、これらの海域の生物生産が激減する可能性があることを明らかにした。
 現在、世界の多くの氷河が縮小傾向にあり、今後数十年の間にさらなる変化が起こりうることが予測されている。このため今回研究で得られた知見を基に、継続的な現地調査観測と数値モデルによる統合的な研究を発展させ、陸域と海洋間の生物地球化学的な物質循環への理解を深めていく必要があるとしている。
 
<用語の解説>
◆フィヨルド :かつて氷河によって削られてできた谷に海水が入り込み、入り江となった地形。