2024年08月08日
九大、短時間でマイクロ渦を作り込む技術構築
【カテゴリー】:行政/団体
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 マイクロ渦の生成は、生物学や化学の分野で高速な細胞操作や効率的な溶液混合を可能とするため、マイクロスケール(100万分の1)の重要な現象となる。だが、マイクロ渦が発生する時間は、1ミリ秒よりも短い時間のため、制御することは困難とされてきた。

 九州大学大学院の山西陽子教授(工学研究院)らの研究グループは8日、極めて短い時間で流れを制御することで、マイクロ渦の発生制御技術を確立したと発表した。マイクロ流体チップ中に組み込んだオンチップメンブレンポンプを用いて、50から450程度のレイノルズ数に相当する高速流を0.1ミリ秒程度の時間で制御することで、渦の発生制御が可能なマイクロ流体システムを構築した。
 
 さらに、渦が配管抵抗の原因となることに着目し、0.1ミリ秒の流れ場を設計・制御することで、流路の順方向・逆方向の流れやすさを調節できる流体素子を実現した。これにより、バルブを使用しない新しい流体制御技術の構築に成功し、その応用として遊泳細胞の単一細胞ピペッティングを示した。
 本成果は、渦の発生制御に基づく、新たな流路機能群の創出に貢献し、マイクロ流体工学の領域・応用を拓くことが期待される。
 同研究成果は米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the U.S.A」(8月6日)オンライン版で公開された。

<用語の解説> 
◆マイクロ流体チップ :微量の溶液や生体試料の混合、反応、分取、精製、検出などさまざまな化学、生物操作をミクロ化できる半導体製造技術を用いて作製したデバイス。
◆レイノルズ数 :流体の慣性力と粘性力の比をとった無次元数。この値が高いほど、渦が発生しやすくなる。マイクロ流体チップ中では1よりも小さい値となることが多い。