住友化学工業

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2024年08月30日
東北大、ブラックホールで回転するガスの構造解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 東北大学 学際科学フロンティア研究所の川面洋平助教(現・宇都宮大学准教授)らの研究グループは29日、理化学研究所のスパコン「富岳」などを駆使して高解像度のシミュレーションを行い、降着円盤の乱流が持つ物理的性質を明らかにしたと発表した。
 ブラックホールは降着円盤と呼ばれる回転するガスに取り囲まれており、ガスは複雑な乱流状態にある。しかし、その性質は長年謎に包まれたままだった。
 特に注目されるのは、大きな渦と小さな渦をつなぐ「慣性領域」において「遅い磁気音波」と呼ばれる縦波が支配的に存在することを発見したこと。この発見により、降着円盤内でなぜ電子よりプラス電荷のイオンの方が効率的に加熱されるのかという観測事実の理論的説明が可能になった。この研究成果は、2019年4月にブラックホールの影の撮影成功を発表したイベント・ホライズン・テレスコープによる観測データの解釈にも重要な示唆を与えるものとなった。
本研究成果は科学誌「Science Advances」に2024年8月28日付で掲載された。

<用語の解説>
◆降着円盤 :ブラックホール、中性子星、原始星などの重力源となる中心天体の周りを回転するガスの流れ。ガスはイオンと電子が電離したプラズマ状態にある。乱流によってガスの角運動量保存が破られるために、完全な楕円運動を描かずに徐々に中心天体に向かって落下する。このとき同時に、重力ポテンシャルエネルギーを熱エネルギーへと変換し高温に加熱される。高温になったプラズマはX線などの電磁波を放射する。





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