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2024年11月08日
東大、哺乳類の睡眠・覚醒、リン酸化酵素群が制御
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学医学系研究科の上田泰己教授(機能生物学)らの研究グループは7日、哺乳類において、プロテインキナーゼA(PKA)と呼ばれるたんぱく質リン酸化酵素が覚醒の促進を、また、脱リン酸化酵素であるプロテインホスファターゼ1(PP1)とカルシニューリンが睡眠を促進することを発見したと発表した。JST戦略的創造研究推進事業による研究の一環。

 近年、脳の神経細胞に存在するさまざまなたんぱく質のリン酸化と呼ばれる化学修飾の状態が、睡眠と覚醒に応じて動的に変動することが観察されてきた。一方で、睡眠と覚醒の制御に関わるリン酸化を促進するたんぱく質リン酸化酵素と、リン酸化修飾を外すたんぱく質脱リン酸化酵素がどのような酵素群なのかは、十分に解明されていなかった。

 研究グループは今回、PKAとたんぱく質脱リン酸化酵素に着目し、網羅的な遺伝子ノックアウトマウスの作製や、ウイルスベクターを用いた機能改変型の酵素の発現誘導実験から、PKAの活性化によって睡眠時間と睡眠圧(眠気)の指標が低下すること、PP1およびカルシニューリンの活性化によって逆に睡眠時間と眠気の指標が増加することを発見した。これらの覚醒および睡眠の促進活性は、PKA、PP1とカルシニューリンが神経細胞間の情報伝達を担うシナプスで働くことが重要であり、さらに睡眠と覚醒の促進が互いに競合的に働くことで、1日の睡眠時間が調節されている可能性が示された。

 本研究により、複数の酵素の働きで睡眠と覚醒のバランスが調整されていることが明らかになり、睡眠時間や眠気をコントロールする方法を分子レベルで考える上で重要な知見となる。
同研究成果は11月6日発行の英国科学誌「Nature」に掲載された。





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