2024年11月29日
パーコレーション理論を新規量子磁性体で初実証 
【カテゴリー】:ファインケミカル
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 物質の相転移は、自然界のさまざまな変化の基礎として重要な現象で、例えば、水が温度変化によって氷や水蒸気になるのも相転移の一つとなる。相転移の普遍理論として「パーコレーション理論」と呼ばれる数学的なモデルがあり、材料科学、電気伝導、生物学、ウイルスの増殖などさまざまな分野でその応用が試みられている。しかし、代表的な相転移として知られる磁気転移については、この理論の実証は単純モデルでの数値計算が行われているのみで、物理学的な実証は行われていなかった。

 東北大学大学院工学研究科の鄭旭光特任教授らの研究グループは、カゴメ格子状の新しい量子磁性体を合成し、これまで未観測の静的な短距離磁気秩序を発見した。さらに、この磁性体でパーコレーション理論の予測と一致する相転移を実証することにも成功した。
本成果は、量子コンピューティングや次世代の情報処理技術の発展に寄与する可能性があり、新しい磁性材料を応用したデバイス開発など、量子工学分野への波及効果が期待される。

<用語の解説>
◆量子磁性体とは :
 電子や光子などの量子同士に強い結びつきができる「量子もつれ」や、量子が複数の状態をとる「量子重ね合わせ」といった量子性を強く示す物質を量子物質と呼ぶ。量子物質が磁性体の場合は特に「量子磁性体」と呼ぶ 。量子力学の特性が大きいスケールで現れるため直接観測できる。
◆パーコレーション理論 :浸透理論とも言う。スポンジへの水の浸透や、伝染病の感染等の普遍現象を単純化したモデルで、その浸透率、感染率(確率)に応じて、ある値を境に様相が一変するという現象(臨界現象)が起きる。その値(臨界確率、閾値)がいくつなのかという問題を考えた理論。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1176