2024年12月10日 |
北大、難治性の「悪性リンパ腫」治療標的解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学医学研究院の中川雅夫助教らの研究グループは9日、難治性の悪性リンパ腫「末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma PTCL)」の新規治療標的を解明したと発表した。 PTCLは成熟T細胞に由来する悪性リンパ腫で、悪性リンパ腫全体の約7%を占める希少疾患。PTCLは一部の病型を除き既存の治療に対する反応性が乏しく、新しい治療法の開発が求められている。PTCLではCD30が高率に陽性であり、同分子を標的とした抗体薬物複合体のブレンツキシマブベドチン(BV)が広く使われているが、奏効率は十分ではなく、BVへの抵抗性の克服が予後の改善につながる。 今回、研究グループは、新規ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9を用いて、CD30陽性PTCL細胞株内の約20,000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、どの遺伝子がBVへの感受性に関与するかをスクリーニングした。 これにより、有糸分裂チェックポイント複合体(MCC)の阻害因子として知られる、MAD2L1 binding protein(MAD2L1BP)とanaphase promoting complex subunit 15(ANAPC15)がBVへの感受性亢進に関わることを見出した。 これを踏まえ、研究グループはMAD2L1BPをノックアウトすることでBVの抗腫瘍効果が増強することを細胞株及びマウスモデルを用いて解明した。さらに、BVとAPC/C阻害薬のproTAMEを併用することで細胞周期の停止を誘導し、相乗的な細胞傷害作用を示すことも見出した。 今回の結果から、MCC-APC/Cを軸とした新規治療標的がBVの抵抗性克服に重要である可能性が示され、今後の臨床応用が期待される。同研究成果は、2024年10月21日公開の「Leukemia」誌にオンライン掲載された。 【用語の解説】 ・ CD30 :TNFレセプタースーパーファミリーに属する膜結合型糖タンパク質。 ・ CRISPR-Cas9 : DNA の二本鎖を切断することで、ゲノム配列の任意の遺伝子を欠損、挿入する遺伝子改変技術のこと。 ・有糸分裂チェックポイント複合体(MCC): MAD2、BubR1、Bub3、及びCdc20で形成される複合体のこと。有糸分裂の際、APC/Cに対して抑制的に機能する。 ・ APC/C(Anaphase Promoting Complex/Cyclosome):細胞周期後期への移行を促進するE3リガーゼのこと。 ・ SLC39A7(solute carrier family 39 member7):小胞体に存在する亜鉛トランスポーターの一つ。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/241209_pr.pdf |