1999年11月09日
旭化成、奇美実業とのPC新設向けBPAは欧米を中心に調達検討
台湾国内メーカーからも引き合い/PCは早期に10万トン体制構築へ
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成、バイエル

 旭化成工業は、先ごろ奇美実業とのPC(ポリカーボネート)合弁計画を発表したが、原料BPA(ビスフェノールA)については、欧米からの輸入を中心に台湾国内のメーカーからも調達する考えだ。またPC事業の展開については、現在のところ光ディスク向けをメインに、PC/ABSアロイなどの事業化を進めていく方針。
 新会社旭美化成は、奇美実業が51%、旭化成が49%出資することになっているが、これは工場建設地の取得を円滑に進めるための措置。もともと奇美実業が自社でPCを事業化する方針で土地取得を申請しており、新会社が折半出資になると別会社扱いとなり再申請が必要となるためだ。こうしたことから形式上奇美実業が過半数出資となるものの、実際の販売などを含めた条件は完全に折半となる。
 また原料BPAは、欧米を中心に調達する方針だ。現在BPAは世界的に需給がタイトとなっており、特にアジア地域は両社の計画以外にも相次いで新増設計画が打ち出され、新規参入メーカーが原料を調達するのは困難と見られていた。しかし、旭化成は事業化の話が持ち上がったときから多くの引き合いがあるとしており、欧米メーカーにとどまらず台湾国内のBPAメーカーである信昌化工、南亜プラスチック両社からも話が持ちかけられているという。このため原料調達には特に問題がないようだ。
 一方、PC事業の展開については、同社の開発したメルト法の特徴である塩素を含まないという利点を生かし、光ディスク向けに力を入れていく。光ディスクの生産にとって塩素は大敵であり、既存の製法では塩素をほぼ完全に除去する必要がある。もともと塩素を含まない旭化成の製法は、その分コストを削減することができるわけだ。さらに旭化成は、PC/ABSポリマーアロイ事業の展開も期待している。現在難燃PC/ABSアロイは、数多くの特許を抑える世界1位の米GEプラスチックスと2位の独バイエルが圧倒的なシェアを占めているが、旭化成はアロイについても両社の特許に抵触しない技術を開発しており、奇美実業が旭化成との合弁事業化を決定した要因の一つとなっている。
 なお旭化成、奇美実業ともアクリルシートを手がけているため、PC樹脂板の展開も考えられるが、現時点では市況が低迷していることもあり事業化は考えていないようだ。また10万トン体制構築の時期については、台湾国内の需要動向を見ながらも第1期の稼働する2001年10月以降1~2年後を目標としている。