1999年11月06日
旭化成、奇美実業と台湾でポリカーボネート合弁
2000年2月に第1期5万トン着工/将来は10万トン体制へ
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成、バイエル

 旭化成工業と台湾の奇美実業は5日、合弁でPC(ポリカーボネート)の製造販売会社「旭美化成股イ分有限公司」を設立、台南県の奇美実業本社工場内に設備を新設する、と発表した。第1期として2000年2月に5万トン設備の建設に着手する。新設備は旭化成が開発したホスゲンも塩化メチレンも使わないメルト法を採用、2000年2月に第1期年産5万トン設備の建設に着手する。機器の一部は10万トン含みであり、需要動向を睨みながら最終的には10万トン体制を構築する。
 奇美実業はABS樹脂の世界最大手であり、業容拡大のためABS樹脂に続く上級樹脂の事業化を模索していた。一方旭化成は、PCの次世代技術の開発に成功し、事業化の可能性を探っていた。こうしたことから旭化成にとって、AN(アクリロニトリル)最大のユーザーである奇美実業が、旭化成にPCの共同事業化を打診し、検討してきた。この結果、両社の思惑が一致し、共同事業化で十分な採算性が確保できると判断、合弁会社設立に至ったもの。
 新会社旭美化成は、資本金12億3,000万新台湾元(約44億3,000万円)で、奇美実業が51%、旭化成が49%出資する。第1期5万トンの設備投資額は約25億新台湾元(約90億円)で、2000年2月着工、2001年10月に操業を開始する。 PCは、ABS樹脂との難燃ポリマーアロイ(PC/ABSアロイ)として、OA・事務機器のハウジング材料に用いられるほか、透明性・高剛性といった特徴を生かし、光ディスク材料などを中心に世界的に需要が拡大している。特に台湾は、すでにOA機器などの世界的な生産基地であるが、今後光ディスクの世界的な生産・供給基地となる可能性が高い。このため、今後PC需要のさらなる拡大が予想されているものの、環境問題などの理由からPCの生産がなく、輸入に頼っているのが現状。旭化成の次世代PC技術は、「非ホスゲン・非塩化メチレン」という環境にやさしい技術であり、品質・性能面でも自信を持っている。また奇美実業の許文龍薫事長(会長)は、以前から「事業化する時はホスゲンを使わない」と公言してきていただけに、両社のニーズも合致している。
 PC/ABSアロイでは、ABS樹脂で世界2位と3位の米GEプラスチックスと独バイエルが激しく争っているが、世界最大のABS樹脂メーカーである奇美実業がPCに参入することで、PC/ABSアロイの競争が激化することが予想される。一方、旭化成としては、エンジニアリングプラスチック事業の強化、あるいはPC板とアクリル板との相乗効果、また奇美実業と同様PS(ポリスチレン)やABS樹脂とのアロイなどの事業化が見込める。