1999年09月30日
出光石油化学、SPSが自動車部品/押出分野で採用へ
用途展開進む/ダウが旧東独で建設中の3.6万トン設備は年内稼動
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:出光興産、三菱樹脂

 出光石油化学は、米ダウ・ケミカルと共同で企業化したシンジオタクチックポリスチレン(SPS)の事業展開が着実に進んでいる。9月24~28日にかけて幕張メッセで開催された国際プラスチックフェア(IPF)’99において、自動車用のスピードセンサーや押出フィルムへの応用例を展示したほか、家電分野では蒸気処理機のハウジングに採用されるなど、用途・数量とも拡大しつつある。一方、ダウが旧東ドイツで建設中の年産3万6,000トン設備がまもなく完成、年内にも操業を開始する見通しとなっている。今後出光石化は次期増設をにらみながら、さらなる事業拡大を目指していく方針だ。
 SPSは、メタロセン触媒を応用した結晶性のPSで、低比重、高融点(270℃)、耐薬品性、耐加水分解性、高周波特性、メッキ特性、高流動性など、多くの特長を持つ。1985年に出光興産が合成に成功した後出光石化に移管され、1988年から事業化に向けダウとの共同研究に着手、1996年10月から千葉工場内で5,000トンの実証プラントを稼働させている。
 当初は自動車の電装部品やコネクタなど量的に小さな用途が中心であったが、今回IPFで展示した自動車用のスピードセンサーのハウジングや三菱樹脂がプリント基板用離型シート向けなどに開発検討している押出シートは、SPSにとって数量面で期待できる、いわゆるボリュームゾーンに位置付けられる。また従来から家電分野への展開も進めているが、今年に入って蒸気を敬遠する厨房などの環境で蒸気を吸引して凝縮する蒸気処理機のボディに採用された。これはSPSとしては一部品当たりで最大の採用例となっている。こうしたこともあり1999年度は、半期で前年度の販売量を上回っており、通期では倍以上に拡大すると期待している。
 一方、ダウは旧東ドイツのBSLコンビナート内で進めている新設備の建設が最終段階を迎えており、試運転を経て年内には商業運転を予定している。従来は出光石化が千葉の5,000トン設備からダウに半分を供給していたがこれがなくなるため、出光石化としては当面5,000トン、コンパウンド換算で1万トンを売り切ることに専念することになり、不足する状況になった場合にはダウから購入することになる。
 さらに2002~2003年には出光石化として、日本を含むアジア地域において3万トン以上の規模で新設備を建設したい意向を持っており、スケールアップに対応するための研究開発を進めつつ、今後も用途展開と量的な拡大を図っていく方針。