1999年09月08日
アジアの合繊原料市況、全面高の展開に
需要回復、原料上昇で先高観続く
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:旭化成、宇部興産、デュポン

 アジア各国の経済混乱などにより過去最安値レベルにまで市況軟化が続いていた合繊原料市場だが、ここ来ての各国経済の立ち直りなどにより一転して全面高の展開が続いており、ナフサをはじめとする原料高騰もあって、一段と先高観が強まっている。
 ポリエステル原料では、EG(エチレングリコール)が急速な需給タイト化により、現在はスポット取引がほとんど行われていない状況となっているが、一部ではCFRトン600ドルを越す水準でのオファーが出されている。長契物についても大手メーカーが10月を550ドルでアナウンス、需給動向によっては、11月ももう一段の上げを行う公算が強まっている。
 一方のPTA(高純度テレフタル酸)は、デュポンが9月長契を500ドルでアナウンスしているが、韓国メーカーも30ドルの値上げを正式にアナウンス、480ドル水準を目指している。しかし、原料PX(パラキシレン)の値上げ攻勢が続いていることもあり、採算的には厳しい状況であることからしばらくは強含みでの展開になるとされている。
 アクリル原料では、日本、米国、欧州の各メーカーが価格引き上げ交渉を本格化させており、年初には300ドル台半ばであったものが、現在は600ドル弱にまで上昇してきている。米国メーカーでは、中国向けを580ドルと前期と比べて50~100ドルアップのオファーを出している。日本メーカーも旭化成が4Qは30%の値上げを打ち出しており、600ドル越えは確実視されている。
 ナイロン原料では、CPL(カプロラクタム)が日本、中国、ロシアなどで定修が相次ぐこともあり一段とタイト化が進んでおり、値上げ交渉が進んでいる。日系メーカーでは宇部興産が9月物を1,200ドルでオファーしているが、10月については1,400ドルを打ち出すとされており、需要がシーズン入りすることもあり、上昇基調が続くと見られている。
 こうした、全面高の展開が続く合繊原料市況だが、年初から春先までは過去最安値水準に低迷状態にあったこともある一方で、原料の原油、ナフサが急激な勢いで上昇したことから、依然として各社とも採算的には厳しい状況にあるとされている。しかし、急速な価格上昇は、末端製品までの適正なマーケット構造を壊しかねないとの懸念もあることから、原料から製品までの適正な価格体系の構築が急がれている。