2000年06月22日
フェアブント推進で広がるBASFのABS樹脂事業
来年メキシコの新設備稼働/韓国はアジア地域で拡販
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:BASF

 BASFは、樹脂事業のグローバル展開を目指した戦略の一環として、フェアブント(Verbund、ドイツ語でネットワーク、統合の意)のさらなる強化に取り組んでいる。樹脂の生産だけでなく、エネルギー、ロジスティクス、ノウハウ、顧客の全てについて、強化することで、資源の有効利用や排出物の削減を実現、環境にやさしくかつ効率的な運営を目指す。特にABS樹脂は、第4半期にメキシコで新設備が完成することから、これまで欧米に輸出していた韓国は、アジア市場において拡販していくことになる。
 BASFのフェブントの出発点は本社のあるルードヴィッヒスハーフェン。グローバルの心臓部であり、1拠点としては世界最大の規模を誇る。7平方キロメートルの敷地に350の工場、2,000の建物があり、8,000品目を超える製品を製造している。敷地内には、総延長2,000キロメートルにも及ぶ路上パイプが張り巡らされ、ある工場で排出されたものが近隣の工場で有効利用されるため、ほとんど廃棄物が発生しない。生産だけでなく、研究開発や物流の面でも密接な結びつきにより、物流コストの低減などにも貢献している。ただし、フェアブントは1工場内にとどまるものではなく、世界の各生産拠点の間の連携も進んでいる。
 例えば、ABS樹脂の場合、下の図に示したように、1980年代はドイツにしか生産拠点がなく、ドイツから米国やアジア地域に輸出していた。その後1990年に韓国のBASFカンパニーリミテッド(当時暁星BASF)が年産4万トン設備を建設、さらに1998年に1系列としては世界最大規模の年産16万トン設備を完成し、アジアで20万トン体制を構築したことにともなって、1998年以降は韓国から欧米への輸出が行われている。ただし、今年第4四半期にはメキシコのアルタミラ工業地区で年産15万トンのABS樹脂/AS樹脂/ASA樹脂のマルチパーパス設備が完成、来年から稼動する見通しであり、来年以降はメキシコから欧州への輸出がスタート、韓国の設備はアジア域内への供給がメインとなる。こうしたこともあってBASFは、2005年に日本市場においてPS(ポリスチレン)、ABS樹脂で5%のシェア獲得を目指しており、今春から販売活動を積極化している。同社の樹脂事業は、世界規模のプラントで多くの用途、ユーザーを満足させることのできるコア標準品を拡販する戦略を取っており、品質と価格の面からも目標達成には自信を持っている。
 さらにBASFは、アジア地域においてPSでは中国(年産16万トン)、韓国(同16万5,000トン)、ABS樹脂は韓国(20万トン)、EPS(発泡ポリスチレン)については、中国(4万トン)、韓国(6万5,000トン)、マレーシア(5万トン)などのスチレン系樹脂の生産拠点を有している。主原料となるSM(スチレンモノマー)は、現在中国に12万トンの設備を有しているが、2002年にはシンガポールでシェルとの合弁会社BASELLイースタンがPO(プロピレンオキサイド)との併産による年産55万トン設備が完成、BASFは27万トンを引き取ることになる。同社が、この引き取ったSMを、既存拠点向けの原料の置き換えに使うのか、あるいは今後の設備増強に割り当てるのかなど、SMにおけるフェアブントが注目される。

<資料>ABS樹脂におけるBASFのグローバルフェアブント
http://c-nt.co.jp/news/basf_abs.jpg>
資料提供:BASFジャパン