2000年06月20日
台湾・奇美実業、ABS樹脂透明グレードに本格参入
今月から台南で生産開始/年末めどに3万トン体制に拡大
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:なし

 世界最大のABS樹脂メーカーである台湾の奇美実業は、このほどABS樹脂の透明グレードに本格参入することを決定、今月から日本を含めた事業展開に乗り出す。今月から台南の専用ラインで生産を開始、現在の生産規模は年産1万トンで、一般グレードのみを生産しているが、年末をめどに3万トンに拡大するとともに、高機能グレードのラインアップを拡充していく方針。
 奇美実業の透明グレード「PA-758」は、http://www.c-nt.co.jp/news/chimei_abs.html">別表に示したように透明度や強度など、バランスの取れた物性を高次元で実現している。日本や韓国、台湾など、現在ABS樹脂の透明グレードを生産しているメーカーは、乳化重合法で生産しているが、奇美実業は独自技術による連続塊状重合プロセスを採用している。連続塊状重合プロセスは、乳化剤などを使用しないため、不純物が少ないというメリットがある。今春からパイロットプラントで生産を開始し、サンプル出荷を行っていたが、今月に入り年産1万トンの専用系列で本格生産を開始しており、年末をめどに2系列を追加、生産能力を3万トンに拡大する。
 ターゲットとする市場は、OA機器や家電、包装、雑貨などのいわゆるスケルトン用途をはじめ、良外観を必要とする用途で、今月から日本を含め販売活動を本格化する。また今回発売したPA-758は一般グレードだが、今後高流動、耐熱、押出、高剛性などのグレードの追加を予定しており、透明グレードのラインアップを強化・拡大していく考え。
 現在ABS樹脂の透明グレードは、パソコン関連機器をはじめ日用品や雑貨などの分野でブームとなっているスケルトン用途が急成長しており、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)とともに品薄となっており、需給が極めてタイトな状態が続いている。ABS樹脂の透明グレードは、汎用品に比べ付加価値がたかいものの、重合時間が長いこと、また生産グレードの切り替え時に透明度を確保するために入念な掃除が必要なため、専用系列を持っていない既存のメーカーは、増産をしようと思っても現実的には対応できないのが現状。これに対し奇美実業は、専用ラインで生産するため競争力も高く、今後の販売拡大に期待している。

http://www.c-nt.co.jp/news/chimei_abs.html">奇美実業のABS樹脂透明グレードと他社品の物性比較(表)