2000年06月06日
日本スチレン工業会の松上会長、業界のあり方や今後の課題など語る
PSの安全性に強い自信/透明性に富む工業会活動を
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東洋スチレン、日本スチレン工業会

 日本スチレン工業会の松上孝会長(東洋スチレン社長)は6日記者会見し、PS(ポリスチレン)産業のあり方や工業会の課題などについて、所感を披露した。この中で松上会長は、PS業界共通の課題として(1)適切な生産、出荷、配当、再投資などによる健全な発展、(2)環境問題に対する適格な対応--など、6点を挙げ、それぞれの目標のクリアに全力を尽くしたいと、述べた。同会長の発言内容は次の通り。

 (1)日本のPSは、1,500億円規模の産業であり、これに1次加工や原料のSM(スチレンモノマー)産業を加えると5,000億円を超える規模になる。PS産業が健全に存在し、発展していくことは、自らのためであると同時に多くの関連業界の発展にも貢献することになる。ついては、適切な生産、出荷を行うだけでなく、適切な再投資ができるよう努力することが大切だ。
 (2)PSは美しく、安価、しかも加工性も優れている。またHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)は、代表的な成形用樹脂と言える。クリーンで環境にやさしい樹脂でもある。こうした長所を広く世間に正しく理解してもらうことに努力するともに、自らも性能や品質の向上に努めることが必要だ。ちなみに日本のPSの需要は、ここ10年横ばいが続いているが、世界的に見れば欧米、アジアとも非常に高度の成長が続いている。1990年に約730万トンだった世界全体の需要は、1999年には1,000万トンに拡大しており、1998年と比べると平均で8%の成長を記録している。特にアジア地域は1997年の経済危機の時を含め毎年プラス成長が続いており、需要は1990年の228万トンから1999年には前年比14%増の411万トンに成長している。
 (3)PSも国際化時代に即した適切な対応が必要となっている。完全な国際流通商品となっており、この点を十分に自覚してコストダウンに取り組むことが肝要だ。
 幸い需給は国際的にウェルバランスと言ってよい。昨年の国内の稼働率は96%だった。世界全体の稼働率も85%となっており、様々なグレードが存在することを考えると、かなりの高稼動と言える。またアジア地域の稼働率は、1998年には79%、1999年は84%で、さらに2000年は85%、2001年に88%、2002年には89%と上がっていく見通しだ。原料のSMも、1999年は日本が96%、アジアで94%、世界全体では92%で、大型の増設計画があまりないこともあり、2000年はさらに稼働率がアップする見通しにある。
 (4)環境と安全の問題に対する適格な対応も極めて重要な課題だ。PSは極めて安全な樹脂だと確信している。スチレンダイマー、トリマーも、国内外における各種の実験や調査の結果、問題がないことが明らかとなっている。最新の報告でも、実際に摂取されている量の1,000倍のスチレンダイマー、トリマーをラットに投与して、子供だけでなく孫の代まで影響を調査したが、全く問題がないとの結果が出ている。このため環境庁が作成したいわゆる“67物質”のリストからの早期削除を求めていく方針だ。一方、リサイクルの問題については関連業界団体と緊密に連携して、必要な対策を進めて行きたい。
 (5)当面の問題としては、関税と需給の問題がある。PSの関税率は今年が8.4%であり、2004年には6.5%に下げられる。ただし、現時点ですでにアメリカの8.9%を下回っているし、他の製品と比べれれば下降幅も小さく、影響は少ないと見ている。
 他方、需給に関しては、アジア地域の原料SMの設備の定修とトラブルによって不足状態となっており、PSは大幅な減産を強いられている。4月の生産量は7万7,150トンであったが、これが1年続いた場合、トータルでは92万トンとなり、明らかに少ない。現在は輸出のカットや自消の削減により、マーケットに影響の出ないよう努力しているが、SMの不足状態は早急に解消される見込みはなく、特に夏から秋にかけて、PSに大きな影響を与えることを懸念している。こうした中できちんと供給責任を果たすことが大切だ。
 (6)最後に工業会の活動については、法的透明性の確保を大原則としてしていく考えだ。これは長い目で見れば業界にとってプラスになると信じている。これまでもこの点を最重要課題としてきたが、一層の徹底を図りたい。