2000年06月05日
ABS樹脂、建材用途が高成長~加工性や外観の良さに高い評価
3年後には車輌用を上回る規模に/今後の課題はコスト
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:日本ABS樹脂工業会

 木粉とのコンパウンドによる異型押出品として、床や敷居、幅木などの用途に採用されている、建材向けのABS樹脂の需要が急速に伸びている。このため日本ABS樹脂工業会は、5月末に発表した中期需要予測から新たに建材住宅部品用途を新設した。同用途の1999年出荷量は前年に比べ25.7%の増加を記録しており、ABS樹脂業界では、今後も2桁ペースの高成長を予測、2003~2004年には車輌用途を上回ると見られている。
 これまで木粉とのコンパウンドを使った建材としては、塩化ビニル樹脂やが広く用いられてきた。ただし、近年の塩ビ代替などの流れを受けて、ABS樹脂やPS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)などの木粉コンパウンドが成長している。主に使われているのは、内装材では床や敷居、階段の手すりや幅木など、外装材としてはフェンスやプランターなど。
 その中でもABS樹脂系の製品は、加工性や外観性に優れていることから需要を伸ばしている。日本ABS樹脂工業会によると、1999年における建材住宅部品の出荷量は前年比25.7%増の3万5,200トンと大幅に増加しているが、国産品内需に占める割合はまだ8.8%に過ぎない。しかし、2000年には27%増の4万4,700トン、2001年には16.1%増の5万1,900トン、2002年には17.9%増の5万7,400トンと2桁の成長が予測されており、国産品内需に占める割合も2002年には13.3%に拡大する見通しだ。このため業界関係者は、「2003~2004年には車輌用の需要を上回る規模に達するのではないか」と見ている。
 ABS樹脂の需要としては、海外に需要の逃げない内需型の用途であり、海外品と競合する可能性はほとんどないことがメリットであるが、将来的には市場が成熟する可能性が高いため、その際の価格が問題となる。先にあげたように、この市場ではABS樹脂系に比べ価格の安いPS系の製品も需要を伸ばしている。現在は加工性の良さでABS樹脂系の人気が高いが、価格で大きな差がつけばPS系にシフトすることも充分考えられるだけに、今後ABS樹脂メーカーは建材グレードの低コスト化に力を入れていくことになりそうだ。

<参考>ABS樹脂建材住宅部品用途の需要予測
http://c-nt.co.jp/news/abs_kenzai.jpg>