2000年05月30日
電気化学の矢野社長、業績や今後の事業展開など語る
重点3分野が着実に成長
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:大洋塩ビ、デンカポリマー、電気化学工業、東ソー、東洋スチレン

 電気化学工業の矢野恒夫社長は30日会見し、2000年3月期業績および今期見通し、また今後の事業展開などについて、大要次のように語った。

 2000年3月期連結業績は、東洋化学が連結子会社に入るなど、入り組んでいるが、現状大きな問題を抱えている会社はない。2000年3月期は営業利益、経常利益とも大幅に増加したが、当期純利益は連結上、大洋塩ビの過年度損失に対する親会社負担処理の振り戻し38億円を含んでいる。このため当期純利益は2000年3月期の83億円に対し、2001年3月期は60億円と減少を予測しているが、実施的には15億円の増益となる。また2001年3月期では有価証券等時価評価の対応でマイナス60億円を予定している。
 製造業は昨年の2月が底と見ており、その後景気は上向いていること、東アジアの回復が進んでいること、IT関連の需要の成長などにより数量面の増加が営業利益に大きく貢献した。一方で、ナフサ価格の上昇にともないいかに誘導品で値上げをするかが問題であったが、塩ビは実質的には値上げの効果がなかった。ただしスチレンは値上げの成果があった。
 今期はまだスタートして2カ月だが、予算を上回るペースで推移している。TC-10をはじめ、あらゆる面で聖域を設けることなく合理化を進めてきたおかげで、損益分岐点が1996年下期には89.5%だったものが、1999年には80.2%と下がってきており、、2000年には77.3%を見込んでいる。
 当社の弱点として事業構造の問題がかねてから懸案となっていた。塩ビは4年前に大洋塩ビを発足したものの、なかなか効果が現れなかったが、東ソーVCM100万トンのビニルチェーンの下で、4月から東ソー主導の体制とした。新体制では、事業収支に関しては東ソーが負担することで合意している。PSは、5社4グループ体制となって、透明性のある業界になってきている。また本体にあったときに12億円の赤字であったが、東洋スチレンとなって数億円の黒字を計上している。値上げも1次は100%、2次、3次もかなり浸透した。今後枠組みが変わる可能性はないとはいえないが、当面はこの枠組みで推移するだろう。
 当社の重点3分野のうち、シリカについてはパソコンだけでなく、携帯電話や民生機器などの需要も成長、“吹いている”といっても良い状況だ。特に携帯電話が需要を引っ張っている。IT関連のこうした展開は今後も続くと見ている。当社は世界的に優位性を持つ者として、がんばって行きたい。また今後はパワーモジュールの熱を逃がすために、HITTプレートのようなサーマルマネジメント商品が期待できる。売上、利益ともまだまだ小さいが、小型化の進展にともなって利用が拡大すると見ているだけに、長い目で見て行きたい。
 特殊混和剤では、従来から続いているものとして第2東名などの高速道路および九州および東北新幹線など鉄道のトンネル工事の案件がある。道路では、第2東名は従来に比べ断面積が200平方メートルと2.5倍となる大きなものだ。往復1,000キロメートルに10本のトンネルを建設しているが、このうち9本には当社の特殊混和剤が採用されている。また補修工事では、6月の終わりにJRや国が中心となって、国にとして補修の診断や工法の内容をまとめることになっているが、これに当社の各種工法が載る見通しだ。公共投資に占める補修費の割合は、現在18%程度だが、2010年には36%、2020年には60%近くまで増えると予想されている。工事の請負については、KFC社と事業提携したほか、約20社を集め施工技術研究会を設立、ネットワーク作りを進めている。
 機能樹脂および樹脂加工は、現在透明樹脂やイミド化ポリマーなどの耐熱樹脂が好調だ。特に透明樹脂は国内優先で、輸出についてはアロケーションの状態にある。このため旧サンスチレンのHIPS設備を設備とバッチ缶を利用して6月完成予定で能力を60%引き上げる。またOPS(二軸延伸ポリスチレン)は、現在2万トンの設備がフル稼動となっているが半分以上がデンカポリマー向けとなっている。打ち抜いたかすを再利用できるうえ、消費の60%を占める関東に拠点を持っていることが強みとなっている。近い将来OPSの増設も必要であると考えている。