2000年05月25日
旭化成、ABS樹脂難燃分野の展開進む
PC/ABSアロイ事業参入も準備
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:旭化成、バイエル

 旭化成工業は、ABS樹脂難燃分野における事業展開を進めている。今年1月に上市したノンハロV-0の難燃グレードである「スタイラックVN80」は、ユーザーによる評価も最終段階を迎えており、近く同グレードを採用した製品が発売される見通しだ。また来年には台湾で奇美実業とのPC(ポリカーボネート)合弁事業がスタートすることから、PC/ABSアロイグレードのサンプル出荷も開始する考えだ。
 スタイラックVN80は、昨年上市したV-2グレードスタイラックVN30につづくもので、同社が長年PS(ポリスチレン)、ABS樹脂、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)で培ってきた広範な技術をベースに開発したもので、米国のUL(アンダーラボラトリーズ)規格において、難燃性で上から2番目の基準に当たるV-0を取得した。ハロゲン系難燃剤・三酸化アンチモンを用いずに難燃性を実現、熱安定性や成形性に優れるほか、高いリサイクル性を有していることが特徴。
 ここ数年でABS樹脂の難燃グレードは、ドイツのブルーエンジェルなどに代表される環境規制の影響を受け、PC/ABSやPC/PS(ポリスチレン)などのポリマーアロイへのシフトが進み、当初9万トン程度あった難燃ABS樹脂の市場のうち3万トンが他の樹脂に置き換わっている。
 同社では、ユーザーが進めてきたスタイラックVN80の評価が最終段階にあり、近く製品への採用も決まりつつあることから、シフトした3万トンのうち3~5割は再び難燃ABS樹脂の需要に戻ると見ている。
 その一方で同社は、難燃分野におけるラインアップ強化のため、PC/ABSアロイ事業への参入も検討している。同社は、台湾の奇美実業と合弁会社旭美化成を設立、2001年10月の完成をめどに年産5万トンのPC設備を建設する計画を進めており、すでに着工している。台湾がディスクの供給基地となっていることから、ディスクグレードの生産が主体であるものの、PC/ABSアロイ大手の米GEプラスチックスや独バイエルの特許に抵触しないPC/ABSアロイグレードを開発する技術を有しており、近くサンプル出荷を開始、トップメーカーを追撃する方針。