2000年05月22日
ABS樹脂、年内に中国で外資3社の新増設計画が完成
3社の国内合計生産能力は63万トンに拡大
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:バイエル

 中国において今年、台湾・奇美実業、GPPC(国喬石油化学)、韓国・LG化学のABS樹脂新増設計画が相次いで完成する見通しだ。奇美実業は年産12万5,000トン設備の試運転を開始、GPPCとLGは能力の倍増を計画しており、年内にも完成する見通しだ。奇美実業とLGはさらに来年以降も増設を予定しており、最終的に中国における3社の合計生産能力は63万トンとなる。
 奇美実業は、中国・江蘇省鎮江で年産25万トンのABS樹脂新設計画を進めており、現在このうち1系列12万5,000トン設備の試運転に入っている。さらに来春以降、もう1系列を稼動させ、中国で25万トン体制を構築する。奇美実業は、1997年に現地で鎮江奇美化工有限公司を設立、1998年からPS(ポリスチレン)2系列計30万トン設備を稼動させている。奇美実業は鎮江で一大ポリマー生産拠点の構築を計画しており、ABS樹脂はフェーズ2に当たる。このほかフェーズ3ではPSの増設を検討している。鎮江のABS樹脂設備が2系列とも稼動すると、台湾の100万トンとあわせ145万トンに拡大する。
 またGPPCは、奇美実業の隣接地で1998年秋から年産4万トン設備の稼動を開始している。さらに今年中に能力を倍増する考えで、中国で8万トン体制、台湾の8万トンとの合計で16万トン体制の構築を目指す。
 さらにLG化学は1998年、浙江省寧波で現地勇興化工の25%出資を得て合弁会社寧波樂金勇興化工有限公司が年産5万トンでスタート、現在年産6万2,000トンの生産能力を有している。同社は昨年2002年をめどに中国での生産を30万トンに拡大する方針を打ち出しており、年内をめどに倍増、12万4,000トンに引き上げる見通しだ。この結果、中国で30万トン体制を構築した際のLGグループのABS樹脂生産能力は、韓国の27万5,000トンとの合計で57万5,000トンとなり、奇美実業、独バイエル、GEプラスチックスに続く世界4位のABS樹脂メーカーとなる。
 日本のABS樹脂業界によると、1999年におけるアジア地域の市場規模は約230万トンと推定されている。なかでも中国は120万トン前後を占める域内最大の市場で、国内自給は20万トン程度と見られており、今後も年率7%前後の成長が予想されている。