2000年04月27日
出光石油化学、アダマンタン誘導体でフォトレジスト材料に新規参入
需要動向を見極め将来は医薬/潤滑油/機能樹脂分野へも展開
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:出光興産

 出光石油化学は27日、30年前から研究開発に取り組んできたアダマンタンの誘導体で次世代型半導体フォトレジスト材料に新規参入、本格供給を開始する、と発表した。来春にも需要が立ち上がると見られているARF(ふっ化アルゴン)エキシマレーザー用フォトレジスト材料向けに供給する方針で、今後はさらにアダマンタン・ケミカルを医薬品や高性能潤滑油、高耐熱・高透明性樹脂などの分野へも展開していく。
 アダマンタンおよびその誘導体は、約30年前の1972~1973年頃から出光興産中央研究所で研究開発をスタート、その後1984年から出光石化がこれを引き継ぐ形で用途展開を進めてきた。特に数年前からは、次世代型半導体フォトレジスト材料として、複数種の誘導体を広範にサンプル出荷してきた結果、ユーザー各社から高い評価を受けている。このため2001年から本格的に立ち上がる予定のARFエキシマレーザー用フォトレジスト材料への供給を開始するもの。ARFエキシマレーザーは、波長が193ナノメートルの光源で、半導体の微細加工に用いられる予定となっている。
 アダマンタンはダイヤモンドの構造と同じ骨格を持つ脂環式炭化水素で、構成単位が全ていす型シクロヘキサンであることから、歪みがなく非常に安定した物質。原料は同社が石油樹脂などに用いているDCPD(ジシクロペンタジエン)で、これを水添・異性化して製造する。出光石化は、国内で唯一工業的にアダマンタンを製造するメーカーであり、このほど従来の塩化アルミニウム法に比べ、廃触媒が発生しない、今後規制される可能性のある有機溶剤を用いないなどの特長を持った新触媒および新製法の開発にめどをつけた。このため現在キログラム当たり3,000~4,000円レベルのアダマンタンの価格も、新製法採用により半分程度まで引き下げられる可能性がある。
 今回開発したのは、官能基を付加させた各種アダマンタン誘導体で、新規物質のため現在化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)への登録を申請中で、年内には登録作業を完了する見通しとなっている。フォトレジスト材料としては、エッチング時における優れた耐性とエキシマレーザー光に対する高透明性を有している。同社はこれを得意な技術を有する企業に外注して生産、供給する。
 同社はフォトレジスト材料向けのアダマンタン誘導体の需要は、来春の立ち上がり後2005年頃には60~80トン規模に拡大すると予想しており、その中で高シェアの獲得を目指す。
 さらに今回のフォトレジスト材料分野を足がかりとして、需要の成長と低価格化が進めば、これまでコスト的な問題からあまり開拓できずにいた医薬品や高性能潤滑油、高耐熱・高透明性樹脂などの高付加価値分野への展開も進めていく方針。